問題意識
高度な情報通信技術(ICT)に基づく情報システムは現代社会を支えている。情報システムは実社会と独立に存在するものではないが、近年では、社会が新しい情報システムを要求するのではなく、逆に、新しい情報システムの出現が社会を変革している。
新情報システムの創造力が極めて重要になってきた時代が到来したと言えよう。
一方で、我が国の情報システムに関する大学院教育課程では、学術的研究を指向した教育および、従来型の現実的なシステムを設計・実現・運用するという実用的な技術教育の両極ばかりが強調されており、新情報システム創造力育成に関しては各人の個性として教育の対象外としてきた。
創造的実践力を育むためには、基盤的な知識・技術の習得に加えて、(A)自ら新システムを構築する経験、(B)自らが作成した情報システムが社会を変革したという実感が重要である。それぞれの実践のために、(A)学生が24時間自由に使える高度試作室、(B)試作成果を広く世の中に公開し、フィードバックを得てInnovationへの動機づけを行う公開プラットフォームの整備を開始した。
利用シナリオ
本施設は大学院生が24時間、365日自由に使える。
高度ICT試作室は、高度なICTを用いて様々なプロトタイプを作成できるように、試作用品(オシロスコープ、半田ごて、ジグソー、グラインダーなど)、コンピュータソフトウェア(オペレーションシステムソフト、プログラム開発環境など)、コンピュータハードウェア(CPUボード、無線チップ、センサなど)、プロトタイプ形状製造装置(3Dプリンタ、レーザーカッター、NCなど)、3Dユーザビリティ検証機器(モーションキャプチャーシステム、シースルー型ヘッドマウントディスプレイなど)が整備されている。これらを自由に活用して、自分のアイデアを様々なICTベースのプロトタイプとして試作し、実験する。
試作成果は、WEB上での仮想的な公開と、展示スペースからなる実世界での公開を可能とする公開プラットフォームを活用して、広く世界に公開し、利用者からのフィードバックを得る。これにより試作した情報システムが実世界を変革することを実感でき、Innovationへの動機づけとなる。
設備
大学院生が24時間、365日自由に使えるためには、全学の学生が自由に出入りできる独立のスペースとすることが重要であり、2010年に竣工したイノベーティブ研究棟の2階フロアを確保した。
全体的には、様々なセンサ、モニタなどの機材を天井、壁に自由に設置できるようにフレームシステムを導入したこと、および、プロトタイプ作成を楽しめるように居室にデザイン性を持たせたことが、スペースの特徴になっている。
本施設は、プレゼンやデモのための「プレイルーム」、プログラミングやミーティングのための「リビングルーム」、主に試作を行う「キッチン」の3つの部屋で構成され、それぞれの用途に必要な設備が設置されている。
名前「ピクトラボ」の由来
ピクトラボはPICT Lab、PICTはPrototyping ICTを表している。PICT は「描く」の意味の「語根」であり、ICT の未来をPICT するラボという意味を込めている。
本施設の特徴は「Prototyping」と「ICT」であるので、シンボルマークとしてデザインした。